通関士と通関士試験
貨物の輸出入の際には、税関へ内容や税額等を申告します。この手続を通関といい、その専門家が通関士です。通関士になるために合格すべき国家試験が通関士試験です。
なお、試験と実務では内容が異なる点も多く、試験に合格しても直ちに実務の即戦力となるとは限りません。逆に、実務経験があってもそのまま試験に合格できるわけではありません。
通関士試験に合格すると、資格手当の支給や就職・転職・異動での優遇、社内外での信頼向上につながる場合があります。
貿易関連の資格はいくつかありますが、日本での国家資格は通関士のみです。
受験資格
学歴・年齢・経歴・国籍等の制限はなく、誰でも受験できます。
受験人数と合格率
過去の結果は毎年、税関のウェブサイトで公表されています。直近約10年は受験者数が6,000人台、合格率は概ね10~20%です(年度により変動します)。
受験生の層
受験者は、貿易関連業務に従事している方や、その業界を志望する方が中心です。通関業者のほか、通関業者に手続きを依頼する立場の企業(メーカー・商社等)の社員や税関職員も受験します。
年齢は20~30代が中心ですが、40代以上も珍しくありません。日本語が母語でない受験者も一定数います。
合格のためには計画的な学習が重要で、不得意分野があっても基礎をコツコツ積み上げれば十分に合格可能です(ただし学習の成果を保証するものではありません)。
1~2回目で合格する人が多い一方、3回目以降で合格する例もあります。必要に応じて受験の継続を検討しましょう。
試験日、受験地、出願、受験料
例年、10月の第1日曜日に年1回実施されます。
受験地は全国13か所(北海道、新潟、東京、宮城、神奈川、静岡、愛知、大阪、兵庫、広島、福岡、熊本、沖縄)。
出願期間は7月下旬~8月上旬が目安で、正式な日程は7月に税関のウェブサイト等で告知されます。出願先は受験地を管轄する税関です。居住地に関係なく受験地は選択できます。試験内容・資格の効力は全国共通です。
受験料は3千円です。
合格発表
11月です。
試験内容と合格基準
通関に関連する法律・実務について、1日で3科目を実施します。
午前
- 1時間目:通関業法
- 2時間目:関税法等
午後
- 3時間目:通関実務
詳細は税関のウェブサイトを確認してください。
通関業法と関税法等は暗記中心、通関実務はこれらに加え、四則演算レベルの計算や事務処理(書類・申告)に関する設問が出題されます。全科目マークシート方式です。
合格基準点は事前公表されませんが、原則として各科目60%以上で合格となります(合計点ではなく科目合格制)。年度により難易度が高い場合、55%や50%へ調整されることがあります。
科目免除
通関について、通算5年以上の実務経験があれば通関実務が免除、通算15年以上であれば通関実務と関税法等が免除されます。
学習時間
学習時間の目安は400~600時間です。実務経験の有無や得意・不得意によってかなり前後します。1回目で合格する人は、6~10か月の集中的な学習で時間を積み上げる傾向があります。短期間で合格する例もありますが、個人差が大きいため、無理のない計画づくりが重要です。
1日あたりの学習時間の目安(400~600時間を想定)
- 1.5時間/日:約9~12か月
- 2時間/日:約6~10か月(初回合格者のボリュームゾーン)
- 3時間/日:約4~7か月
- 4時間/日:約3~5か月(短期集中向け)
- 5〜8時間/日:約2~3か月(超短期集中向け)
フルタイム就業している人は、平日1~2時間、休日3~5時間をめどに週の学習量を確保するケースが多いです。
独学か、通信・通学講座か
【通信・通学講座がおすすめな人】
- 自分だけだと続けにくい
- 学習のペースを作りたい
- 寄り道しやすい(脱線しがち)
とくに通学やライブ配信の講座は、その場で質問でき、学習の流れを整えやすいです。
【独学がおすすめな人】
- 自分で計画を立てて淡々と進められる
- 固定の受講時間が合わない(自分の都合で学びたい)
- 費用を抑えたい
迷う場合は、独学を基本に単科の講座や「みこ会」を併用する方法も有効ですよ!