通関士の仕事
通関士は、お客さんから依頼を受けて、貨物の輸出入の手続やその際にかかる税金の申告(通関)を代わりに行う仕事です。
基本的には通関を業務内容とする会社(通関業者)に勤務することで、通関士として働くことができます。独立は非常に難しい資格なので、最初から独立志望なら他の仕事を選ぶのがよいでしょう。
書類作成の他、貨物の検査の立会い、税関や依頼主への対応等の仕事があります。大手企業は人手が多いので分業化されており、中小企業は少人数なので幅広く業務を担当する傾向にあります。
通関業しか営んでいない純粋な通関業者は少なく、通常はフォワーダーや倉庫のように物流関係の業務を他にも営んでいます。
通関士の仕事はAIに奪われるのか?という議論が最近では活発ですが、正直よく分かりません。AI化がかなり進んでいるという会社もあれば、まだまだ難しいという会社もあるようで、過渡期であることは間違いなさそうです。
勤務地
通関業者は、大きな港や国際空港の中、あるいはその付近に集中しています。そのため、勤務地もその辺りが中心です。貿易業界未経験で通関士を目指す人は、自分が希望する勤務地に求人があるのか先に調べた方がよいでしょう。
最近では在宅勤務を導入する通関業者も増えていますが、通関未経験でいきなり在宅勤務を認める例はあまり聞きません。いくらか経験を積んでからとなることが多いですが、会社によって異なります。
年収
通関士の平均年収は500〜600万円程度と言われていますが、基本的に会社員なので、勤務先の給与テーブルで決まります。
あくまで平均なので、残業込みでも300〜450万円、昇給もほぼ無しという通関業者も珍しくありません。
逆に1,000万円以上というのは、大卒採用で難関の就職試験をくぐり抜けた人たちが勤務する大手の物流業者が多く、その場合、通関士だから給料が高いというよりは、元々給料が高い会社に勤めている人が通関部に異動して通関士となっているだけのような気がします。
なお、大手でも通関部の管理職を含めた一部の正社員だけが正規の待遇で、実働部隊の多くは別枠採用の派遣社員が占めるパターンもあります。この場合、派遣採用で入ってそこから正規待遇の正社員に切り替わる例をあまり知りません。
つまり、平均レンジから外れる通関士も少なくないため、通関士は年収500~600万円が当然とは限らないのです。
通関業者は通常、海上貨物(海貨)を担当する会社と、航空輸送貨物(AIR)を担当する会社に分かれます。AIRの方が忙しくて夜勤もある分、給料が高い傾向にあります。一例として、みこ会卒の某通関士さんは、大手AIRに中途採用され30歳で700万円くらいもらえたそうです。
キャリアプラン
貿易業界経験者であれば、これまでのキャリアに通関士試験を受ける理由があるはずなので、ここでは貿易業界未経験者に向けて通関士資格取得後のキャリアの考え方をまとめます。以下はあくまで大まかな傾向に基づく説明であり、地域や会社によって例外は多々ありますので、状況に応じて柔軟に考えてください。
まず、通関業しか営んでいない純粋な通関業者もありますが、フォワーダーのように通関も含めた輸出入業務一式を手配する会社が多いので、そういった会社も視野に入れて求職活動することが一般的です。ただし、通関以外の業務を幅広く持つ会社では、通関士資格があっても他部門に配属される可能性があります。配属見込みや職務範囲は応募前に確認しておきましょう。通関業を営んでいる会社であれば、通関士資格は高く評価されます。通関はあまり外国語の能力を必要としないので、アルファベットすら分からないレベルでもない限り、英語ができなくても心配ありません。
近年は、メーカーや商社の物流部門でも通関士資格の評価が高まっています。自社通関と言って輸出入の手続を通関業者に依頼せず自社で行っているところも増えており、また、依頼するにしても専門知識があれば通関業者とスムーズに連携できるからです。メーカーや商社の方が通関業者より待遇がいい傾向もあるので、通関士資格を取ってそちらに勤める人もよくいます。ただし、英語や中国語等の語学要件を求める企業も少なくありません。
また、関税コンサルタントの人気も高まっています。関税削減の提案、調査、データ分析などを担う職種です。BIG4では年収1,000万円超の例もあり、貿易業界では高年収の部類に入ります。未経験採用は少なく、フォワーダーや通関士として実務経験を積んでからの転職が一般的です。税関職員から転職した例もあります。
海運(船会社)、特に大手は待遇がいいものの、通関士資格はあまり評価されません。
会社員である以上、未経験者は若いほど有利です。みこ会の卒業生からの報告でも、20代であれば引く手数多ですが、30代前半になるとやや苦戦し、30代後半からは難易度が上がる印象はあります。もっとも、50代〜60代で成功する例もあり、その場合は同一企業内の異動や、まず派遣で現場に入り経験を積むなどの工夫が見られます。新卒採用でもない限り、実務経験がないのに貿易関連の資格を増やしても評価はされません。通関士資格取得後はとにかく実務経験を積めるところに入って、そこからステップアップする作戦がベターです。
また、営業職は通関より給料水準が高めで人材不足のこともあり、そちらを狙う手もあります。通関士資格持ちでフォワーダーの営業に就くと、通関は未経験であっても社内や取引先からの信頼を得られ役立ったという報告はよく受けます。通関部では保有が当たり前の資格でも、それ以外では希少価値があるからです。
優秀な人は引き抜きで転職していくこともよくあります。
以上の他、貿易事務や物流コンサルタントなど、貿易業界には色々仕事があります。職種や会社により異なりますが、貿易業界なら通関士以外でも通関士資格は評価されることがよくあります。
トレードディスパッチ
貿易業界の転職専門エージェントです。みこ会の卒業生もたくさん良い会社に入社できましたので、ご紹介します。


取扱業種
- フォワーダー
- 乙仲
- 商社
- メーカー
取扱職種
- 営業
- 営業事務(アシスタント)
- オペレーション
- 経理
- 通関士
- 貿易事務
- その他関連職
取扱案件の応募要件(目安)と選考ポイント
- 経験者優遇:貿易の流れや基本ルールを理解している貿易業界経験者は需要が高いです。
- 未経験でも可:通関士資格があれば、未経験でも前向きに検討されるケースがあります。
- 転職回数の目安:大手は2回以下、中小は4回以下が一つの目安です。短期離職が連続・複数回ある場合は厳しくなりますが、即戦力となる経験があれば個別に相談可能です。
- 営業は人材不足:業界未経験でも、営業・接客経験があれば検討対象になることがあります。
- 通関士は実務経験が有利:資格に加え、通関実務経験があると評価が高い傾向です。
- 現場作業ができる人:保税事務に付随して、倉庫での積み卸しや動物・植物検疫の立会いなど、現場作業に対応できる人は重宝されます。